現れるだけで鳥肌の立つゴキブリ……
なぜ?いつから?私たちはゴキブリをこんなに嫌うようになってしまったのでしょう?
私たちは子供のころ、親がゴキブリを嫌う姿を見て学習し、それが嫌悪の対象とするべきだと信じこまされてきました。
親はさらにその親からそれを学び、はるか昔から脈々とその認識が受け継がれてきたのです。
では、一番最初は誰から…?いつから…?
一番最初にゴキブリは悪と思った祖先が、なぜゴキブリを悪と決定したのかについて少し考えてみましょう。
質感
姿の似ているカブトムシとゴキブリを比べた時に、異なっている見た目と言えば『油』および『硬さ』です。
硬い甲虫は手で持った時につぶれる心配がありませんが、クロゴキブリは柔らかくて握るとつぶれてしまいそうですから、つかむという行為は躊躇しますね。
つまり甲虫は力を入れて確保できるため、逃亡や反撃の心配が少ないということになり、恐怖感より征服感が打ち勝つのでしょう。
ゴキブリの中でも世界最大のヨロイモグラゴキブリなるものがいますが、こちらは甲虫のような外見で油っぽくもなく硬いためか、愛好者が世界中にいるほど人気です。
またゴキブリのあのテカテカですが、撥水機能を有する抗菌コートで、言わばゴキブリを強者たらしめている高性能な鎧なのです。
とはいえ、油は油。
可愛い幼子のすべすべ肌には触りたいけど、この子が脂ぎったおっさんになってからも頬ずりしたいかと言われたら我が子であっても遠慮したいのと同様、脂性肌は気持ちのいいものではないのです。
静寂
油っぽくテカってて柔らかいといえば、コオロギがいるじゃないか!とおっしゃる人もいるでしょう。
でも彼らは最大の武器である『歌声』を持っています。
ブサイクでも歌がうまいとわかった途端にかっこよく見えてしまう、あのマジックですね。
それに比べ、クロゴキブリは無言で忍び寄ってきます。
自ら情報を発信しないところが、余計に得体の知れなさを醸し出しているんですね。
スピード
やはり恐怖の根源はこれかもしれません。
『追いつかない』『打ち勝てない』という思いは、相手を敵視するのに十分すぎる要素です。
しかも逃げて遠ざかるだけでなく、襲い掛かるつもりじゃないくせに時折向かってきますので、進路の予測が不能です。
発射に失敗したミサイルが意図せず頭上に飛んでくるかもしれない恐怖に似ていますね。
生命力
我々の本能を直接震撼させる恐怖といえば、彼らの生命の強さでしょう。
ここにもやはり『勝てない』という恐怖が存在します。
殺虫剤まみれにしても逃亡スピードはなかなか衰えませんし、万一無事に巣にたどり着いたら、メスは死ぬ前に卵を切り離すという底力…
繁殖力も半端なく、ゴミだろうが仲間だろうがなんでも食べて自らのエネルギーに変えることができる万能性…
生命力に繊細さの微塵もないところが、傍若無人なイメージを定着させています。
制御不能なご近所さん
どんなに汚かろうと、どんなに強かろうと、我々の身近な場所にいなければ何の問題もないのです。
ですが、彼らはふてぶてしくも領土侵犯してきます。
ここは自分の家だ、自分の家にいて何が悪いとばかりに、人の家を土足で踏みにじるわけです。
傍若無人で勢力が強く、交渉が通じない相手というのは、虫でも人でも恐ろしく感じ、それど同時に嫌悪が生まれるという図式は頷けますね。
衛生害虫としてのゴキブリ
ここまで説明してきましたが、やはり見た目も性格も最低最悪なことによる『不快害虫』の要素が強いのではないかと思われます。
では、その他の実害を考えてみましょう。
ハチや蚊などのように刺してきて健康被害を直接与える虫や、病原菌を媒介して衛生環境を悪くする虫を衛生害虫と言いますが、まずゴキブリは刺すことはしません。
確かに、病原菌を保有しているかもしれませんが、世の中の虫や野生動物のほとんどはなんらかの菌をもっているものであり、人間ですら肌の表面はばい菌だらけです。
サルモネラ菌やら大腸菌をゴキブリだけが特別に持っているわけではなく、どの生き物もみんなそこそこ汚いわけで、外で犬の糞にたかっていたノミバエが網戸の隙間から侵入し、頻繁に食卓をウロウロ飛び回る方がよっぽど厄介で害があるといえます。
可愛いとされているカタツムリなんかは植物を食い荒らす上に、危険な寄生虫を保有していることがあり、見た目に騙されてはいけないものの筆頭です。
衛生害虫としてはゴキブリはNo.1とは言えないのではないでしょうか。
経済害虫としてのゴキブリ
人間の所有物に害をなすことで経済的な被害を与える白アリのような虫を、経済害虫と言います。
農作物・家畜・食品・その他所有物に対して、ゴキブリの実害はどれほどのものでしょうか。
まず、ゴキブリが農作物や家畜に手を出して被害が続出、という情報はほとんど聞いたことがありません。
食品に対しては、確かに食い荒らして糞をまき散らすイメージがありますが、冷蔵庫が標準装備されている現代では、低温で活動できないゴキブリの食品に対する被害というのも、一般家庭ではあまりないように思われます。
また、温かいところを好むゴキブリが電子レンジの中に入って勝手にめちゃくちゃな操作をしていた昔の出来事を思い出しますが、そういった問題も現在の家電では対策済みですので、被害はあまり見られません。
現在でも実際配電盤に入り込み火災を起こした例も無くはないですが、放火件数よりはるかに下回ります。
地球上では人間の数よりゴキブリの数の方がはるかに多いですので、比率で言えば人間の方がとてつもなく実害があるわけです。
まとめ
いかがでしたか?
だんだん、ゴキブリが良いヤツに思えてきたのではないですか?
家の中でクロゴキブリに出会うだけで、通報されそうなほど悲鳴をあげてしまう方も少なくないと思いますが、あえて今回はゴキブリを中立な立場で分析してみました。
ゴキブリを決して擁護するわけではないですが、人も虫も第一印象がすべてだなんて、悲しすぎますもんね。
「男というのはね、口と顔で選ぶとハズレを引くわよ。(マイメロママの名言より)」
「よかった探しが、きっとお前を幸せにしてくれる。(愛少女ポリアンナ物語より)」
さあ、先入観を捨てて、新しい目でキモイ彼らを見てみようではありませんか!
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