沖縄県民にとって「海」はとても身近な存在です。
幼い頃から両親や親戚に連れられて、ビーチパーティやBBQ、キャンプ、釣りにと海に訪れる機会は多いものです。
大人になってもデートスポットやウォーキングコースとして防波堤や浜辺を散歩したりと、海水浴以外の目的でもよく利用されています。
しかし、必ずといって良いほど「ある時期」が近づくと大人から言われる言葉があります。
「旧盆に海に近づくと霊に連れていかれるよ」
そんなことを言われてしまうと、ギョッとしてしまいますよね。
昔から先祖崇拝を重んじてきた沖縄県民にとって、1年に1度、あの世から帰ってくる先祖を迎える旧盆は、正月よりも大切な行事として扱われています。
しかし、どうして旧盆中だけ海に入ってはいけないのでしょうか?
本土とは異なる、「沖縄の旧盆の時期」を知らない観光客が海に入ってしまったら一体どうなってしまうのでしょうか?
この記事では、観光客が知らない沖縄の旧盆の風習と、旧盆中に海に入ってはいけないと言われる真相を明かしていきたいと思います。
そもそも沖縄の旧盆はいつなの?
沖縄では、古くからの伝統行事や季節ごとの行事を執り行う際には、今でも旧暦を用いて行います。
そのため、お盆の時期も旧暦の7月13日から15日の3日間となります。
旧暦の7月13日にあたる日がウンケー(お迎え)で先祖を迎え入れる日です。
その翌日がナカビ(中の日)で、お中元を持って親戚の家々を回って挨拶をします。
そして、最終日がウークイ(お送り)です。
親戚一同が集まり、先祖に1年間の報告をしたり、飲食を共にして過ごします。
深夜0時を回る頃、年長者が取り仕切る中でお供え物やウチカビと呼ばれるあの世のお金を燃やし、また来年も来てくれるよう先祖を見送ります。
本土でも有名になっている沖縄のエイサーは、このウークイで先祖を見送る踊りで、沖縄の旧盆には夜遅くまでエイサーの太鼓や三線の音が響き渡ります。
旧盆中に海に入ってはいけないのはなぜ?
沖縄では、海の向こうのはるか彼方には「ニライカナイ」(理想郷)が存在していて、神々や先祖たちが豊かな暮らしを送っているものと信じられてきました。
そして、旧盆がやってくると海を渡って先祖たちが子孫へ会いにきて、旧盆の最終日にはまた海を渡って帰っていくとされています。
しかし中には、成仏できない魂も一緒に海を渡ってくるのですが、迎えにくる者がないために陸に上がれず、淋しさのあまり海水浴で海に訪れる人を海へと引きずり込むといわれています。
観光客はどうなるの?旧盆中に海に入ってはいけないホントの理由
身の毛もよだつ恐ろしい言い伝えですが、夏場の水難事故は後を絶たないのも事実です。
どんなに天気の良い日でも、どんなに泳ぎの得意な人でも、夏場の水難事故に巻き込まれるかもしれない原因をいくつかご紹介します。
土用波
晩夏にあたる夏の土用の時期(立秋の前18日間)になると、土用波と呼ばれる通常の2~3倍の高さを持つ大波が1000波に1波の割合で現れます。
遠く離れた遠洋で発生した台風の影響であることが分かっていますが、日本が良い天気で波が低くても、急に大波が押し寄せてくることがあります。
離岸流
離岸流とは、波打ち際から沖合にできる局地的に強い引き潮のことです。
離岸流に巻き込まれると、あっという間に足の届かない沖合に流されてしまい、流れに逆らって岸まで戻ろうとしてもどんどん流され、力尽きてしまいます。
シュノーケリングに夢中になっていたり、流れて行ったビーチボールを追いかけていて巻き込まれるケースもあります。
海の危険生物
沖縄には本土では見かけることのない海の危険生物が多数存在しています。
その中でも、海水浴中に特に注意して欲しい危険生物はアンボイナガイとウミヘビです。
どちらも神経毒を持っており、刺されたり噛まれたりすると体がしびれ、麻痺して動けないまま溺れてしまう危険があります。
季節の変わり目
旧盆を迎えるころから海水温も下がってくるため、足がつりやすくなったり、心臓麻痺が起こりやすくなると言われています。
まとめ
昔から先祖崇拝・自然崇拝が根強く残る沖縄。
先祖の誰一人が欠けても今の自分は存在しておらず、命をつないでくれた先祖を敬い、日頃から見守ってくれていることを感謝することを大切にしています。
そのため、先祖の帰ってくる旧盆中は親戚一同が集まり、1年間の報告をして時間を共に過ごすことを大切にしてきました。
そしてまた、海に囲まれ、台風も多い沖縄の先人たちは自然の脅威も知っていました。
そのため、旧盆中はそれぞれが自分勝手に過ごすのではなく、「親戚一同が集まって祖先を迎え、今ある命に感謝しないといけないよ」という戒めと、旧盆あたりの海には危険が多いため、水難事故に巻き込まれないようにと懸念する部分から「旧盆に海に行くと霊に引きずられるよ」という表現で言い伝えられているのが真相のようです。
観光で訪れた場合、いつもと違った環境は解放感を生み出しますが、海の危険性は皆同じですので充分気を付けてくださいね!
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